いい日旅立ち。

こんばんは。
Chacoです。

先日、台湾へ行ってきた。
一泊二日、台北&高雄弾丸の旅である。

わたしは以前、台湾の航空会社で働いていたのだが、その時の台湾人の同僚の結婚式に呼んでもらったのだ。

航空会社を辞めてから3年。
辞めてから一度も行ってなかったので、台湾に行くのも3年ぶりである。

チケットを予約した時はまだそうでもなかったが、日にちが近づいてくると、やはりワクワクが膨らんでくるものだ。

ガイドブックを改めて読んで、行きたいところをピックアップしたり、得意の妄想をしてみたり、きっとうだるだろう暑さに、まだ行ってもいないのに一足早く辟易してみたり…。
想像力がたくましいのも考えものである。

そして、前日、中途半端なところで終わっていた「ルイ・ヴィトンレポート」をこのままの状態にして、旅行なんて行ってられないと、早く寝なければならないのに、行きつけのスタバでなんとか書き上げ、0時半頃、ようやく布団の中へ潜り込むことができた。

そして、その3時間30分後、ケータイの目覚ましが鳴った。
午前4時。

7時発の便に乗るために、4時50分にタクシーを予約しておいたのだ。

「眠い…眠すぎる!嘘でしょう!?ねえ!嘘って言って!」

あまりの眠たさに、「もう起きなければならない」という現実を受け止めきれず、「信じられない…」と8回程度寝ぼけ眼でつぶやきながら、なんとか支度にとりかかる。

前日のルイ・ヴィトンレポートの仕上げがたたったのだろう。
責任感が強いのも考えものである。

そんな責任感が強いわたしは、誰にともなくぶつぶつと文句を言いながらも、なんとか支度を済ませ、きっかり4時50分に、荷物を持って玄関を出た。

家を出る前は、「こんなに朝早いから、運転手さんが忘れてたらどうしよう…」と少し心配をしていたのだが、タクシー運転手もわたしと張るぐらい責任感の強い人間だったようで、きちんと家の前で待っててくれたことに、ひとまず胸をなでおろした。

そういえば、タクシー会社に予約の電話をかけて、「ちょっと待ってくださいね〜」と保留にされた時、その保留音が山口百恵の「いい日旅立ち」で、しかも、結構長く待たされたので、軽くAメロとサビまでは聴くことができたのを思い出した。

「…確かに!いい日立ち!」

わたしはそこで合点がいったというわけだ。

その時は何も思わなかったが、今となっては、「わたしの旅立ちを前もって祝福してくれていたのか!タクシー会社の保留音よ!!」と、わたしのキャリーケースを後ろのトランクに入れてくれている運転手さんの横顔を見つめながら、ひとり、心の中でタクシー会社に御礼を述べ、タクシーに乗り込んだ。

「…まぁ、日本のどこにも、わたしを待っているひとなんていないけどね。」

と、少しふてくされた言葉を小さく吐き捨てながら。
母の背中で聞いた歌を道連れに。

そして、タクシーは羽田空港に向けて出発。
午前5時の東京の街を適度なスピートで駆け抜けるタクシー。

夜明け間もない東京の街は、いつもよりグレーな印象で、よりいっそう無機質に感じた。

しばらく、おセンチ(死語)な気持ちで車窓の景色を眺めていたわたしだが、この今から旅立つ高揚感と、なんともいえない切なさを世に向けて発信したいと、インスタ用の自撮り写真を撮影しようと試みる。

なぜなら、今回の旅はひとりで行動する場面も多くあるので、その際に、景色だけではなく、見るひとにいっそう楽しんでもらえるように、自撮りをして自分も景色の一部となろう!と思ったのである。
またしてもわたしの大いなる責任感が発動したというわけだ。どこまで責任感溢れる人間なのだ涙が出てくる。

おもむろに、スマホを片手に、ぎこちなく、自分を撮影し始める、後部座席のオンナ。

タクシー運転手は、どんな気持ちでわたしを後ろに乗せていたことだろう。

そんなタクシー運転手の胸中を慮りながらも、己の大いなる責任感に突き動かされたわたしは、なかなかうまく撮影できない己の顔面に向けて、スマホのシャッターボタンを執拗に押し続けるのであった。

運転手はそんなわたしに狂気を感じていたかもしれない。

そして大量に撮った写真のうち、投稿した一枚がこれである。

白黒に加工し、赤色の部分だけ色を残した。

…その時はなかなかイカしてる(死語)と思ったのだが、後から見れば見るほど、「市松人形」にしか見えなくなってきた。  

おしゃれにしようと白黒に加工しちやったものだから、「市松感」がよりいっそう際立っている。

しかも、唇は赤いので、化粧をした市松人形である。髪だって今にも伸びそうな勢いだ。

化粧をした「市松人形」を、後部座席に乗せて、ひた走るタクシー。

もはやホラーでしかない。

そして、タクシーは羽田空港に無事到着。 荷物を下ろしてくれた運転手は、狂ったような自撮りする市松人形から逃げるように、明け方の東京の街に消えていったのだった。

おませな市松人形の旅が始まる。

[ いい日旅立ち。 ]オモシロ美人のよもやま話2016/07/06 00:24